プログラミング出張授業を中心とした学校支援活動の紹介

2023-04-17

学校の机、椅子のミニチュアとパソコン

JISA(情報サービス産業協会)の会報誌に掲載された記事より、当社の出張授業の取組をご紹介します。

K3Tunnelの開発を担当している今野は、JISA(情報サービス産業協会)のプログラミング教育支援グループの活動にも参画しています。プログラミング教育支援グループでは、参加メンバー間での情報共有、子ども向けプログラミングワークショップの開催、女性ITエンジニアのキャリアトークなどに取り組んできました。

本エントリでは、JISA会報(No.148)に掲載された記事から、K3Tunnelを使った出張授業の取組を紹介している部分を公開いたします。
※2021年度の訪問回数を訂正、2022年度訪問回数の情報を更新しています


はじめに

当社は、K3Tunnel(ケイサントンネル)という「プログラミング”で”学ぶ」をコンセプトにした学習サイト(https://k3tunnel.com/)を2017年から提供しています。このサイトを中心にさまざまなことに取り組んでおり、「ITプロフェッショナルと世の中をつなぐ」ことを活動のミッションに掲げています。ここでは、その中でも、プログラミング出張授業を中心とした学校支援に関連するものを紹介していきます。なお、学校での活動は、社会貢献活動として、学校に費用負担いただかない形で活動しています。

小学校での取り組み

小学校では、K3Tunnelのオリジナル教材を使った出張授業と、先生方がK3Tunnelを使ったプログラミング授業をできるよう支援する取り組みの二本立てで活動しています。withコロナの学校生活が定着してきた2021年度以降は、現地訪問回数も増えてきており、2021年度は現地訪問32回、オンライン2回、2022年度は現地訪問36回、オンライン1回でした。 活動を継続してきたこの5年間で、小学校の状況は大きく変わったと実感しています。

GIGAスクール構想の加速

2019年12月に文部科学省が発表した「GIGAスクール構想」は、小中学校で1人1台端末、高速大容量の通信環境の整備を目指すものです。新型コロナウィルス感染拡大の影響で前倒しになり2020年度に一気に整備が進みました。コロナ以前は、パソコン教室の利用が普通で、数人に1台というのも珍しくありませんでしたが、2021年度には、私たちが訪問したすべての小中学校で1人1台タブレット端末を普段使っている教室で使える状況になっていました。子どもたちの端末を扱うスキルは、この数年で目に見えて向上しています。

プログラミング体験の広がり

2020年度の小学校プログラミング教育必修化を契機に、子ども向けのプログラミング学習について、さまざまなコンテンツ、サービスが提供されるようになりました。 数年前は、クラスのほとんどが「初めてのプログラミング」でしたが、最近は、過去に授業でやっていて全員が経験していたり、授業でやったことがなくても、半分程度が学校外で何かしらのプログラミング経験を持っていることも珍しくなくなってきました。学校差は大きいものの、全体の傾向としては、プログラミングが子どもたちにとって身近な存在になってきていることを肌で感じています。

変化への対応

GIGAスクール構想によりタブレットPCが普及したことで思わぬ変化もありました。例えば、タッチ操作が基本となり、マウスは、ほぼ消滅し「右クリック」が子どもたちに通じにくくなりました。Windowsタブレット、Chromebook、iPadと利用端末が多様化し、端末特有の操作は子どもたちの方が詳しくなりました。画面サイズが小さくなった影響でK3Tunnelのプログラミング画面の使い勝手が悪くなってしまい、画面デザインを変更する必要もありました。

一方、企業にとって支援しやすい状況になりはじめているとも感じています。以前は、学校格差の激しいICT環境の確認や先生方との認識合わせのため、現地訪問して事前打ち合わせをする必要がありました。しかし、現在では、ほぼすべての学校で一定レベル以上のICT環境が整備され、Web会議に対応いただける学校も増えたことで、事前訪問が必要ないケースも増えてきました。私たちにとっては大変ありがたいことです。

小学校出張授業用コンテンツ

小学校の授業で使うことを前提としたK3Tunnelのコンテンツは、出張授業という限られた時間(45分×2コマ)で実施することを前提に開発しています。文部科学省から出されている小学校プログラミング教育の狙いを念頭に置いており、中でも「プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付く」教材をつくることを大切にしています。

テスト授業などを含めると、ひとつのコンテンツにつき半年から1年程度の時間をかけて開発しています。特に「教科の学びを深める」ことも重視したコンテンツではNPO法人企業教育研究会(千葉大学教育学部発のNPO法人)に監修をお願いするなど、授業コンテンツとして、よりよいものにできるよう工夫しています。

新型コロナの影響が大きかった2020年度は、直接訪問する回数は減りましたが、オンライン授業に挑戦するよい機会ともなりました。何度か教室とオンラインでつなぐ授業にトライした結果、現地でフォローできる人がいれば、オンラインでも実施できることがわかりました。逆に言うと、現地でのフォローは必須でした。ただし、教室で1台のパソコンがWeb会議につながれ、ひとつのディスプレイを遠くからみている状態で授業する場合です。今後ICT環境が変化してくれば、変わっていくところだと思います。

中学校での取り組み

中学校では、職業体験学習のひとつとして「システムエンジニア体験講座」を提供しており、夢★らくざプロジェクトの「おしごとなりきり出前道場」に参加させていただいています。

Mission06「パン屋さんのこまったを解決しよう」( https://k3tunnel.com/mission/006/ )を利用し、企画→提案→設計→構築→運用・保守というシステムライフサイクルを90分で体験できるようにした内容になっており、当社のエンジニアとのQAも交えつつ、システムエンジニアの仕事内容をお伝えしています。中学生の感想をいくつか紹介します。

  • 僕は将来やりたいことが決まっていないのですが、今回の講座でシステムエンジニアがとてもかっこいい仕事だと思いました。僕もK3Tunnelのようなサイトを作りみんなにやってもらいたいと思いました。
  • 特に心に残っているのは「自分が関わったシステムがいろいろな人に使われているのにやりがいを感じる」という言葉です。僕もグラフをぴったり合わせるのに苦労しましたが、31点になったときに、すごく嬉しかったです。
  • システムエンジニアという職業の奥深さが少しわかったような気がしました。将来、この仕事を選ぶかどうかはわかりませんが、このような仕事があることを知れたことは、どこかで活かせるときが来ると思います。

この体験が進路選択するときの一助となることを願っています。システムエンジニア体験講座は、2021年度は21回(おしごとなりきり出前道場以外も含む)訪問しました。2022年度は、12回になる見込みです。

プログラミング出張授業のニーズは高い

小学校の先生方は、社会問題となるほどの業務量を抱える中「学生時代に勉強していないプログラミング」を教えなければいけなくなっています。プログラミング教育導入を前向きにとらえている先生であっても、なかなか教材研究などの時間をとれないのが現状のようです。そのような状況で、IT企業がプログラミング出張授業を提供すると大変喜んでいただけます。中学校での職業体験講座もニーズが高いように感じます。小学校が増えた影響で、中学校での2022年度の実施回数は、2021年度より少ないですが、お声がけいただく数は、むしろ増えています。

出張授業には、有志社員がフォロースタッフとして参加したり、ときには、メインで授業をするガイド役をしたりしています。社員からは「日常業務では味わえない体験ができる」「仕事への誇りを再確認できる」「単純に楽しい」といった声が寄せられており好評です。

K3Tunnelの出張授業はパッケージ化されており、授業進行スライド、ワークシートなどもサイト上に公開しています。当社では「認定ガイド」という仕組みを整え、1時間程度の講習、フォロースタッフとしての授業参加ののち、メインで説明するガイド役に挑戦するプロセスを整えています。公開しているものについては、CSR活動としてプログラミング出張授業をやりたい企業の方にも使っていただけます。興味のある方は、お気軽にお問合せください。

おわりに

今回紹介したような活動は、今後も、学校現場や子どもたちの実態にあわせ継続していく予定です。最近では、高校の探究学習へのテーマ提供や、中学生の職場見学受け入れなどもさせていただきました。一社では難しいことも複数社で取り組めばできることもあるかと思います。何かご一緒できることがありましたら、ぜひお声がけください。