K3Tunnel(ケイサントンネル)「パン屋さんアドバイザー」でSE体験しながらのプログラミング学習~北海道足寄町立螺湾小学校~
NSSOLでは2017年よりサステナビリティ活動として「社会に活きるプログラミング」を学べるWebサイト「K3Tunnel(ケイサントンネル)」を公開するとともに、社員による小学校への出張授業を展開しています。2020年はCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大により出張授業の実施が難しくなり、NSSOLはWithコロナの下でも授業ができるようオンライン授業を模索しはじめます。そして、その頃に出会った北海道足寄町螺湾(らわん)小学校の先生とオンライン授業に挑戦することにしました。
全校児童11人の小さな学校との取り組み
螺湾小学校は足寄町の中心部から20キロほど離れた酪農牧場が点在する山あいにある全校児童11人の小さな学校です。オンライン授業に取り組んでくれたのは5年生と6年生の複式学級の4人の子どもたちと担任の先生です。
今回この螺湾小学校とオンラインで授業を実施したのは単に螺湾と東京の距離が離れていたからだけではありません。螺湾小学校はオンライン授業を試したくなるような、そんなわくわくする魅力をもった小学校だったのです。
子ども向けにプログラミングのオンライン授業をおこなう大切なポイント
私たちは、COVID-19の感染拡大の影響からオンライン授業の検討を始めていました。 ただ、オンライン授業はネットワーク環境や端末の台数といったインフラ面だけが整えばできるというものではありません。大切なことは「おとなが子どもたちのそばにいる」ということです。子どもたちは、プログラミング中は操作に戸惑ったり、正しくプログラムを組めているか不安になったりします。その時におとなに声をかけてもらうことで子どもたちは安心し、集中して授業に取り組めるようになります。学校でオンライン授業を実施する場合は子どもたちの人数、習熟度にあわせて複数の先生でフォローすることが望ましいと考えます。
螺湾小学校での授業は「子どもたちにたくさんの経験をしてほしい」という先生の思いから 螺湾小学校はこの条件が十分に備わった学校でした。 それは、インフラ面ではGIGAスクール構想により児童一人に一台のPCとネットワーク環境がすでに整っていたことと、何より担任の先生のICTを利用した先進的な取り組みが大きなポイントでした。
先生は、螺湾のような小さなコミュニティではどうしても人との関係や経験が限られてしまうという問題意識を持っています。その打開策のひとつとしてICTの活用を進めています。例えば、オンラインを使って山口県の小学校と学級会やお楽しみ会を合同で行ったり、広島とつながって戦争や原爆の体験談を聞いたり。こうした取り組みを通して子どもたちの世界を広げようとしています。もちろんプログラミング教育にも熱心で、さまざまな教材の中からK3Tunnelを高く評価し、ご自身でK3Tunnelを用いた授業を実践しています。また、教室ではいつでも子どもたちがPCを使える環境にしています。授業でPCを多用することで子どもたちのICT能力を高めているのです。
こうしたことから、私たちはオンライン授業を最初に試行するのは螺湾小学校だ!と考え先生に打診したところ快諾していただきました。
子どもたちの将来の選択肢を広げたい、選んだミッションは「パン屋さんアドバイザー」
先生がNSSOLの授業に期待したのはプログラミング学習だけではありません。子どもたちがSE(システムエンジニア)という普段接することのない仕事をしている人の話を聞くことで、将来の選択肢を広げられるのではないかと考えたのです。
そんな先生が選んだK3Tunnelのミッションは「パン屋さんアドバイザー」です。「パン屋さんアドバイザー」はSEのお仕事紹介も兼ねたプログラミング教材でグラフや表の読み取りの単元でも利用できます。
SEの仕事やNSSOLのビジネス事例を紹介したあとに、子どもたちがSEになったつもりでパン屋さんが困っていることを解決しようという内容になっています。パン屋さんが困っているのは「売れ残りと売切れをなくしたい」ということ。その悩みを解決するために、その日いくつパンをつくればいいか教えてくれるシステムをつくることをめざしていきます。
まず需要曲線とイベントカレンダーを見比べて、どんな日にどれだけのパンが売れているかルールを読み取るワークをおこないます(例:チラシを配った日はいつもより多く売れる、定休日に売れるパンは0個、など)。
次に抽出したルールをもとに設計書をつくりそのあとでプログラミングしていきます。
最後に需要曲線とシステムが提示するパンの製造数が合うようにチューニングしていきます。チューニングの差が±3個以内だと得点が入る仕組みになっているため点数が上がればチューニングが合っている、下がれば合っていないとわかるので、試行錯誤を繰り返しながら最高得点31点(31日分×1点)をめざします。
(プログラミング画面 ビジュアルプログラミングになっています)
授業のようす~プログラミングを楽しむ~
授業の初めにNSSOL講師から「SEを知っていますか?」と問いかけると、子どもたちはみんな「知らない」という様子でした。しかし、SEの仕事が世の中のどんなことと結びついているのか身近なNSSOLのビジネス事例を紹介すると「なるほど!」とすぐに納得してくれたようでした。
引き続きSEの仕事に子どもたちが取り組んでいきます。NSSOL講師からのパンの需要曲線とイベントカレンダーからルールを読み取るワークの説明もよく理解してくれ、まず自分で考えてから隣どうしでお互いに気づいたルールをまとめ合っていました。そのルールに基づいて設計書を作成するといよいよプログラミングに入ります。
NSSOL講師からプログラミングの方法を教えてもらうと、女の子たちはK3Tunnelに備わっている「ヒント動画」や「できあがり例」をみながら自力で黙々とどんどん進んでいき、最後のチューニングまで完遂しました。5年生と6年生の男の子は少しにぎやかに、難しいところは先生にフォローしてもらいながらゲーム感覚で点数を競っていました。それぞれの子がそれぞれに楽しみながらプログラミングに取り組んでくれたことがとてもよかったです。
一方、画面の向こうにいるNSSOL講師は子どもたちがワークやプログラミングをしている時間はなんだか手持無沙汰なようす。とうとう我慢しきれずに「寂しいからみんな声を出して」とお願いする場面も。すると子どもたちはすかさず大きな声で応じてくれ、なごやかな雰囲気をつくってくれるなど、終始よい雰囲気で授業を進めることができました。
オンライン上の画面の文字を、先生が大きくわかりやすく書いてくださいました。オンライン授業ならではの風景です。
「ホンモノのSE」の話を聞いてみる
当日は通信環境も問題なくスムーズに進行できましたが、私たちにとって初めてのオンライン授業でしたので万が一のトラブルに備えて、また子どもたちのフォロー役として北海道の関連会社である北海道NSソリューションズからベテランSEが螺湾に駆けつけ授業を見守りました。
授業の最後に設けた「ホンモノのSEへの質問コーナー」ではベテランSEが、パン屋さんのシステムと同じように様々な工場でも生産管理システムで需要を予測しながら製品をつくっていること、近年はAIなど先端技術も活用していること、などを話してくれました。子どもたちは全員AIを知っていたこともあり、コンピュータシステムやSEを更に身近に感じてくれたようでした。
初めてのオンライン授業が無事に終わりホッとしました。そして私たちに貴重な機会を与えてくださった螺湾小学校のみなさんに感謝いたします。ありがとうございました。
最後に子どもたちと担任の先生からの感想をご紹介します。
子どもたちからの感想
- SEの仕事を知らなかったので、知ることができて面白かった。
- プログラミングの授業がとても楽しかったので、またやってみたい。パソコンやプログラミングをするのが好きなので、将来の夢が広がった気がします。
- Zoomでやるのがはじめてと言っていたけど、わかりやすく教えてくれてさすがだなと思った。
- K3Tunnelが面白かった。難しいブロックもあったけど、ヒントを見ながらできてうれしかった。
- 先生が、結局プログラムを組むのは人と言っていたのが、AIとかもあるけど、人が大事だと分かった。
担任の先生からの感想
授業のはじめにSEの仕事の話をしていただいたことで子どもたちも興味をもって進めることができました。御社で実際にしている仕事(気象観測衛星ひまわり)やその仕事に関わったSEの声は非常にわかりやすかったです。へき地の子どもたちにとって、いろいろなおとなに触れるのは貴重な機会であり職業選択の幅が広がったと思います。「パン屋さんアドバイザー」はストーリー性があり、非常に取り組みやすい教材だと思いました。
教員向けのプログラミング講習会のご案内
今回、螺湾小学校とNSSOLが知り合ったきっかけは、NSSOLが全国の小学校を対象として実施している教員向けのプログラミング講習会です。この講習会では新学習指導要領内の6年生の算数「Dデータの活用」を学べる「データをめぐる謎を探れ!」を体験していただきます。アニメーション仕立てのストーリーに沿ってワークとプログラミングをしていくとても楽しい内容です。この講習会にご興味があればお問い合わせください。
※この記事は、NSSOL STORIESからの転載です